労務相談顧問は、事務所によって何が違う?
「労務相談に乗ってくれる社労士を探しているけれど、ホームページを見ても違いがよく分からない」
社労士事務所を探している経営者や人事労務担当者の方で、こう思われている方も多いのではないでしょうか。
特に「労務相談顧問」「労務顧問」といったサービスは、多くの社労士事務所のホームページで見かけます。
一方で、ホームページには料金と簡単なサービス内容だけが掲載されていて、
「結局、事務所によって何が違うの?」と感じることも少なくありません。
実際には、同じ「労務相談顧問」でも、
- 相談できる回数や方法
- 回答までの時間
- 法改正などの情報提供
- 定期的な面談の有無
- 顧問契約に含まれる業務
など、サービス内容や関わり方は事務所によって大きく異なります。
これまで企業の人事・労務担当者から相談を受ける中で、現在契約している社労士事務所について、次のような声を聞くことがありました。

なるべく相談を1回にまとめてほしいと言われ、気軽に相談できない



法改正があっても、こちらから聞かないと情報をもらえない



相談しても、法律上できる・できないという回答だけで終わってしまう



メールを送っても、返信が来るまでに時間がかかる
こうした「契約してみて初めて分かった」というミスマッチを防ぐためにも、契約前にサービス内容や社労士との関わり方を確認しておくことが大切です。
契約前に確認したい6つのポイント
ここからは、具体的な6つのポイントを見ていきましょう。
① 労務相談は気軽にできるか
まず確認したいのが、日常的な労務相談をどのように受けてもらえるのかです。
例えば、
- 相談回数に制限はあるか
- メールで相談できるか
- 電話相談は可能か
- オンラインでの打ち合わせは可能か
- 相談内容によって別途料金が発生するのか
などです。
「分からないことがあったら、その都度気軽に相談したい」という会社であれば、相談回数に大きな制限がない事務所の方が使いやすいと思います。
一方で、相談件数が多くなった場合には、顧問料の見直しを提案されるケースもあります。
そのため、「相談回数に制限がないか」だけでなく、「相談が多くなった場合はどうなるのか」まで確認しておくと安心です。
② 回答までの時間はどのくらいか
「相談したけれど、なかなか回答が来ない」というのも、顧問契約を結んでから困りやすいポイントです。
契約前に、「メールで相談した場合、通常どのくらいで回答をもらえますか?」と確認しておくことをおすすめします。
特に、従業員への対応を急いで判断しなければならないこともあります。
そのため、回答までの目安が分かっていると安心です。
③ 法改正などの情報提供はあるか
社労士との顧問契約に法改正などの情報提供を期待する企業も多いのではないでしょうか。
例えば、
- 毎月のメルマガやニュースレターがあるか
- 法改正があったときに案内してもらえるか
- 自社に関係する法改正について説明してもらえるか
- 「法律が変わります」という情報だけでなく、「自社では何をすればよいか」まで教えてもらえるか
といった点です。
法改正の情報を確認するだけなら、インターネットでもある程度は調べることができます。
顧問社労士に期待したいのは、「法律が変わりました」だけではなく、「御社の場合は、こう対応する必要があります」と自社に置き換えて説明してくれることではないでしょうか。
④ 自社の状況をどれだけ理解してくれるか
労務相談で大切なのは、法律の知識だけではありません。
その会社がどのような会社なのかを社労士が理解しているかも重要です。
会社について把握している情報が少ない状態で相談に答える場合、一般的な回答になりやすいと考えられます。
そのため、月1回などの定期面談を行っているか、必要なときにはメールだけでなく、対面やオンラインなどで相談できるかも確認してみてください。
⑤ 顧問料にはどこまで含まれているか
労務相談顧問を比較するときには、月額料金だけを見るのではなく、その料金にどこまでのサービスが含まれているのかを確認することも大切です。
例えば、
- 就業規則・各種規程のリーガルチェック
- 就業規則の作成・改定
- 雇用契約書などの書類の確認
- 労使協定に関する相談・作成
- 助成金の申請代行
などです。
特に注意したいのが、「相談はできるけれど、実際の作業は別料金」というケースです。
例えば「就業規則について相談できます」と書かれていても、修正や改定作業まで顧問料に含まれるとは限りません。
契約前に、「相談だけなのか」「実際の作業までお願いできるのか」を確認しておくと、契約後の行き違いを防ぎやすくなります。
⑥ 自社が求める「社労士との関わり方」に合っているか
最後に、ぜひ考えていただきたいのが、「社労士にどこまで関わってほしいのか」ということです。
社労士に労務相談をするといっても、相談への向き合い方は事務所によって異なります。
ここでは、社労士との関わり方を3つのタイプに分けて考えてみます。
1「質問回答型」 ー専門知識を提供するー
質問すると、法律や制度、就業規則などを踏まえて回答してくれるタイプです。
会社側に労務の専門知識を持つ担当者がおり、最終的な法的問題点の確認をするために専門家を利用したい会社、また、セカンドオピニオンとしての利用には向いているスタイルです。
2「個別相談型」 ー会社の事情を踏まえて解決するー
単純に法律上の答えを伝えるだけではなく、相談の内容に応じて会社の状況を確認したうえで、一緒に対応を回答してくれるタイプです。
例えば、「この対応は問題ありませんか?」という相談に対して、法律上問題があるかどうかだけを回答するのではありません。
「なぜ、その対応をしようとしているのか」
「これまで会社と従業員の間でどのようなやり取りがあったのか」
「過去に同じようなケースがあったのか」
など、相談の背景を確認したうえで対応を考えます。
つまり、「法律に照らした正しい答え」から、「この会社にとって現実的な答え」へ一歩踏み込むタイプです。
ただし、このタイプでも、基本的には会社から相談を受けることが関わりの起点になります。
そのため、相談が来るたびに会社の状況を確認し、その時点での事情を踏まえて対応することになります。
①「質問回答型」と②「個別相談型」の違い
①と②の違いは、「会社の事情を確認するか、しないか」と単純に分けられるものではありません。
質問回答型でも、回答に必要な範囲で会社の状況を確認することはあります。
違いがあるとすれば、「質問されたことに対して答える」ことを基本とするのか、それとも「質問の背景や事情まで掘り下げ、その会社にとってどう対応するのがよいかまで一緒に考える」のかという、関わり方の違いです。
どちらが優れているということではありません。
自社で状況を整理し、必要なことを専門家に確認できる会社であれば①が合うでしょうし、個別の問題について専門家と一緒に考えたい会社であれば②が合いやすいでしょう。
3「継続伴走型」ー会社を継続的に理解し、問題発見・予防まで行うー
さらに、会社との関わりが深いタイプです。
このタイプでは、相談があったときだけ会社の状況を確認するのではなく、定期的な対話を通じて、普段から会社の状況や考え方を理解していきます。
そのため、後から個別の相談があった場合にも、その質問だけを切り取って考えるのではなく、それまでの会社の状況や経緯、会社が目指している方向などを踏まえて、一緒に対応を考えることができます。
また、定期的に会社の状況を確認しているからこそ、相談を受けたことだけに対応するのではなく、必要に応じて会社側に問いかけたり、今後の対応を提案したりすることもできます。
特に、
- 労務は総務や経理の担当者が他の業務と兼任している
- 労務について、何から手をつければよいのか分からない
- 自社の状況を理解したうえで、一緒に考えてくれる専門家がほしい
という企業には、このような関わり方が合いやすいと思います。
社労士によって「相談への向き合い方」は違う
ここまで3つのタイプに分けて説明しましたが、私自身、社労士として仕事をする中で、「専門家として、どこまで相談に関わるのか」ということは、社労士によってかなり違うと感じています。
以前、顧問先からの質問に対して私が考えたメールの回答について、一緒に仕事をしていた先輩社労士から、
「これは聞かれていないから、回答に入れなくていい」と何度も修正されたことがあります。
私は当時から、質問されたことに正確に答えるだけでなく、その質問について適切に判断するために必要な情報があれば、それを会社に伝えたり、確認したりすることも必要なのではないかと考えていました。
例えば、質問された内容とは直接関係がないように見えても、その情報によって判断が変わる可能性があるのであれば、「この点も確認しておいた方がよい」と伝えることには意味があると思っています。
一方で、質問されたことに絞って、簡潔に回答することを求める会社もあります。
そのため、どちらが正しいということではありません。
ただ、今振り返ると、先輩社労士との違いは、単なるメールの書き方や回答方法の違いではなく、「相談者とどのように関わるか」という社労士としてのスタンスの違いだったのだと思います。
そして、この違いは、顧問契約を結んでから「思っていたのと違った」と感じる原因にもなり得ます。
例えば、「質問に答えてくれればよい」という会社と「会社の状況を理解して、こちらが気づいていないことも教えてほしい」という会社では、同じ「労務相談顧問」を求めていても、期待しているサービスはまったく違います。
だからこそ、社労士を選ぶときには、サービス内容や料金だけでなく、「社労士が顧客とどのように関わることを大切にしているのか」も確認してみてください。
「質問したことに答えてくれればよい」のか。
「質問の背景まで確認して、一緒に対応を考えてほしい」のか。
それとも、「普段から会社を理解し、相談する前の課題にも気づいてほしい」のか。
自社が求める関わり方をあらかじめ考えておくことで、社労士とのミスマッチを防ぎやすくなります。
また、関わり方が深くなるほど、社労士が会社の状況を把握するための時間や相談内容を踏まえて検討・提案する時間も必要になります。
そのため、一般的には、①のような「質問に答えてもらう」スタイルよりも、②や③のように会社の状況を確認しながら対応するスタイルの方が、顧問料が高く設定されていることがあります。
だからこそ、「料金が高いから良い」「安いから悪い」と考えるのではなく、自社が求める関わり方と、その料金が見合っているかを確認することが大切です。
社労士選びで大切なのは、どのタイプの社労士が優れているかではありません。
自社が社労士に何を求めているのかを明確にし、その関わり方をしてくれる事務所を選ぶことです。
それが、契約してから「思っていたのと違った」というミスマッチを防ぐことにもつながります。
まとめ
① 労務相談は気軽にできるか
相談回数や相談方法、相談が多くなった場合の扱いを確認する。
② 回答までの時間はどのくらいか
通常の回答までの目安や、時間がかかる場合の連絡方法を確認する。
③ 法改正などの情報提供はあるか
情報提供だけでなく、自社が何をすべきかまで説明・提案してもらえるか確認する。
④ 自社の状況をどれだけ理解してくれるか
定期面談など、社労士が継続的に会社の状況を把握する機会があるか確認する。
⑤ 顧問料にはどこまで含まれているか
就業規則・労使協定作成、リーガルチェック、助成金申請など、何が顧問料に含まれるのか確認する。
⑥自社が求める「社労士との関わり方」に合っているか
「質問に答えてくれる」「個別の相談に乗ってくれる」「継続して伴走してくれる」のどのタイプを求めているのか整理する。
当事務所は定期的な対話を大切にし、労務問題の発見・予防を支援します
アンタングル社会保険労務士事務所は、「会社への不信感を生まない職場の土台をつくる」という想いをもとに、就業規則の作成・改定・運用支援、労務相談などを行っています。
また、会社の状況を丁寧に伺い、法律や制度についてお答えするだけでなく、その会社にとってどのような対応がよいのかを一緒に考えることを大切にしています。
労務について「ちょっと気になる」「どうしたらいいか分からない」ということがありましたら、問題が大きくなる前に、お気軽にお問い合わせください。
